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マニュアルと知識と匙加減
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朝日新聞 掲載日
平成12年1月30日 あなたの日常生活にマニュアルはありますか?あるとすれば、きっと大変窮屈な日々を過ごさなければなりません。しかし現代は、まずマニュアルを求め、またマニュアルがなければ不自由なのも現実でしょう。子犬や子猫を初めて飼った方々から「先生、飼育マニュアルには生後三ヶ月で XX G 餌を与えなさいと書いてありましたので、その通りにしているのですが大丈夫でしょうか」という質問をよく受けます。私達獣医師はそれに対して次のように答えます。「種類や成長状態、飼育環境によってそれぞれ異なります。痩せている場合には量を増やし、太り気味のときは量を減らしてください。成長に応じた量でネ」と。これはいわゆる匙加減、いい塩梅といったマニュアル化できない表現です。
動物は機械のようにマニュアル通りに飼うことは到底できるものではありません。あらかじめ、飼おうとする動物について十分な知識を得ておくことが、先ず重要でしょう。我が子を育てると同じように愛情はむろん、飼い主が今まで培ってきた知識と常識を最大限駆使して育てると云うことに他なりません。これはほんの一例であり、勿論、マニュアルがなければ困ることは沢山あるでしょう。私達獣医師もマニュアルを活用し、それを応用する知恵を持つべく努力しております。生命あるものの育成は、マニュアル通りには対応できないということを、新たに子犬や子猫を飼おうとする方々に知って戴きたいと思います。(社)横浜市獣医師会会長
中川秀樹
社団法人横浜市獣医師会