Law of animal

動物六法

 動物の愛護及び管理に関する施策を
            総合的に推進するための基本的な指針


 
〜目次〜
条文
第1 動物の愛護及び管理の基本的考え方
第2 今後の施策展開の方向
 1 基本的視点
  (1) 国民的な動物の愛護及び管理に関する取組の推進
  (2) 長期的視点からの総合的・体系的アプローチ
  (3) 関係者間の協同関係の構築
  (4) 施策の実行を支える基盤の整備
 2 施策別の取組
  (1) 普及啓発・多様な主体との総合理解の醸成
  (2) 適正飼養の推進による動物の健康及び安全の確保並びに変換・譲渡の促進
  (3) 周辺の生活環境の保全と動物による危害の防止
  (4) 所有明示(個体識別)措置の推進
  (5) 動物取扱業の適正化
  (6) 実験動物の適正な取扱いの推進<
  (7) 産業動物の適正な取扱いの推進
  (8) 災害対策
  (9) 人材育成
  (10) 調査緊急の推進
第3 動物愛護管理推進計画の策定に関する事項
 1 計画策定の目的
 2 計画期間
 3 対象地域
 4 計画の記載項目
 5 策定及び実行
  (1) 多様な意見の集約及び合意形成の確保
  (2) 関係地方公共団体との協議
  (3) 計画の公表等
  (4) 実施計画の作成
  (5) 点検及び見直し
第4 動物愛護管理基本指針の点検及び見直し
附則
附則(令和2年4月30日 環境省告示第53号)

 動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)第5条第1項の規定に基づき、動物の愛顧及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(平成18年10月環境省告示第140号)の全部を次のように改正したので、同条第4項の規定により公表する。
 

第1 動物の愛護及び管理の基本的考え方

(動物の愛護)
   動物の愛護の基本は、人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊厳を守るということにあり、動物をみだりに殺し、傷つけ又は苦しめることのないよう取り扱うことや、その生理、生態、習性等を考慮して適正に取り扱うことである。人と動物とは生命的に連続した存在であるとする考え方や生きとし生けるものを大切にする心を踏まえ、動物の命に対して感謝及び畏敬の念を抱くとともに、この気持ちを命あるものである動物の取扱いに反映させることが欠かせないものである。
 人は、他の生物を利用し、その命を犠牲にしなければ生きていけない存在である。このため、動物の利用や殺処分を疎んずるのではなく、自然の摂理や社会の条理として直視し、厳粛に受け止めることが必要であり、動物の命を軽視したり、みだりに利用したりすることは誤りである。社会における生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養を図るためには、命あるものである動物に対し優しいまなざしを向ける態度が求められる。
(動物の管理)
   人と動物とが共生する社会を形成するためには、動物の命を尊重する考え方及び態度を確立することと併せて、全ての動物の所有者又は占有者(以下「所有者等」という。)は、その社会的責任を十分自覚し、鳴き声、ふん尿等による迷惑を含め、人の生命、身体又は財産の侵害や生活環境の保全上の支障を防止する必要がある。
 この際、逸走やみだりな繁殖を防止する措置等により動物の行動等に一定の制約を課す必要が生じる場合があることのほか、また、所有者がいない動物に対する恣意的な餌やり等の行為が、動物による害の増加やみだりな繁殖等、動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合があることについても十分に留意する必要がある。
 我が国では、幅広い世代に渡る約3割の国民がペットを飼育しており、ペットは伴侶動物(コンパニオンアニマル)として生活に欠かせない存在になっている一方で、動物が人と一緒に生活する存在として社会に受け入れられるためには、人と動物の関わりについても十分に考慮した上で、その飼養及び保管(以下「飼養等」という。)を適切に行うことが求められる。令和元年度の世論調査では、ペットが人に与えうる影響について肯定的な回答が多い傾向にある一方、否定的な回答も一定数存在した。動物の所有者等は、ほえ癖や臭気等による迷惑や被害の加害者に自分がなり得ることへの意識がややもすると希薄な傾向にあるが、被害者の置かれた状況を認識し、動物を所有し、又は占有するものとしての社会的責任を十分に自覚して、適正な飼養に努めなければならない。
(合意形成)
   国民が動物に対して抱く意識及び感情は、千差万別である。例えば、家庭動物等の不妊去勢措置、猫の屋内飼養、動物実験、畜産等における動物の資源利用、様々な動物を食材として利用する食習慣、狩猟等の動物の捕獲行為、動物を利用した祭礼儀式、外来生物の駆除、動物の個体数の調整、安楽殺処分等については、これらの行為が正当な理由をもって適切に行われるものである限り、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「法」という。)やその精神に抵触するものではないが、現実には、これらの行為に対する賛否両論が国内外において見受けられる。様々な状況に置けるペットの殺処分に対する意識を問う令和元年度の世論調査の質問では、けがや病気で回復の見込みがない場合に殺処分を許容できるとする回答は全体の4割であった。
 このように、個々人における動物の愛護及び管理の考え方は、いつの時代にあっても多様であり続けるものであり、また、多様であって然るべきものであろう。人と動物の共生は、人が、社会の中において、動物をそれぞれの役割に応じて適正に取り扱うことも包含しており、合理的な目的に応じて、適正な動物の取扱いがなされるならば、実験動物や家畜等の利用についても、共生の在り方の一つであると考えられる。また、動物が社会や自然環境に及ぼす正と負の側面に関する知見の蓄積や、消費行動等の個人や社会の活動が動物の世界に与えている影響等、人と動物の関係を考える上での新たな状況や視点に留意した対応も求められている状況にある。
 その上で、万人に共通して適用されるべき社会的規範としての動物の愛護及び管理の考え方は、普遍性及び客観性の高いものであるとともに、国民的な合意の下に形成していくことが必要である。動物愛護の精神を広く普及し、我々の身についた習いとして定着させ「人と動物の共生する社会」の実現に向けた将来ビジョンの形成を目指していくためには、我が国の風土や社会の実情、日本人の動物観の特質や海外との違いをを踏まえ、人と動物の関係についての丁寧な議論を積み重ねることが重要である。

 

第2 今後の施策展開の方向

1基本的視点
 (1) 国民的な動物の愛護及び管理に関する取組の推進
 動物の愛護及び管理に関する活動は、古い歴史を有し、多くの貢献をしてきたが、適切な愛護及び管理の基盤となるべき国民共通の理解の形成までには至っていない。人と動物の共生する社会の実現を図るためには、今後とも、多くの国民の共感を呼び、幅広い層に対して自主的な参加を促していく施策を、学校、地域、家庭等において展開し、社会を構成する全ての当事者が、適正飼養の観点から必要な取組を推進するとともに、国民の動物に対する考え方が多様であることを前提に、目指す社会の姿や動物の取扱いに関する行為規範の在り方について、中長期的に検討していく必要がある。
 (2) 長期的視点からの総合的・体系的アプローチ
 動物の愛護及び管理に関する施策の対象となる動物は、家庭動物のみならず、展示動物、実験動物、産業動物、危険な動物(特定動物)等であり、人の占有に係る動物が幅広く対象とされている。その施策の分野も、普及啓発、飼養保管、感染症予防、流通、調査研究等、広範囲にわたっており、様々な実施主体によって、それぞれに関係法令等に基づく施策が進められている。一方、動物の愛護及び管理に関する問題は、国民のライフスタイルや価値観等の在り方に深く関わるものであるという性質を有し、施策の効果や結果がすぐには現れないものが多い。また、動物の愛護及び管理の分野においても、科学的、客観的な情報共有を通じて証拠に基づく政策立案 (EBPM:Evidence-based Policymaking) を推進していくことが求められている。各種施策を着実に進めていくためには、長期的に、かつ科学、法律、倫理・動物観、生活・経済等の多角的な視点から動物の取扱いを検討し、できる限り定量的かつ客観的な内容を備えた目標及びその達成手段等を設定して、総合的かつ体系的に取り組みを進めていく必要がある。
 (3) 関係者間の協同関係の構築
 法の施行に関する事務の多くは、都道府県、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)及び同法第252条の22第1項の中核市(以下「中核市」という。)の所掌するところとなっているが、その事務を円滑かつ効果的に進めるためには、都道府県、指定都市及び中核市にとどまらない全ての地方公共団体の関与の下に、動物の愛護及び管理に関係している者の積極的な協力を幅広く得ながら、その施策の展開を図っていくことが肝要である。
 動物の愛護と管理をめぐる課題に、地域の実情も踏まえて効果的に取り組むためには、指定都市及び中核都市以外の市区町村を含む行政間及び行政内の部局間の連携や、動物愛護推進員や動物愛護の地域ボランティア及び民間団体の協力が重要であり、このためには、国、地方公共団体等の行政機関、獣医師会、企業、業界団体、動物愛護団体、動物の所有者等の団体、学術研究団体、調査研究機関、地域ボランティア等の適切な役割分担の下に、動物の愛護及び管理に関する関係者のネットワークが国及び地域のレベルにおいて重層的に作られていくようにする必要がある。取組に際しては、相互理解に基づく多様な関係者の主体的な参画・協働によって、地域づくり、社会福祉、公衆衛生といった社会課題の同時解決を図る視点が必要である。
 (4) 施策の実行を支える基盤の整備
 動物の愛護及び管理に関する施策の実行を図るためには、これを支える基盤の整備が重要である。具体的には、国及び地方公共団体においては、地域の実情を踏まえ、関係団体や動物愛護推進員の育成と活動支援並びに災害対応や多様な関係者の参画・協働にも役立つ地域拠点としての動物愛護管理センターを始めとした動物愛護管理施設の機能の拡充等が必要である。また、国は、地方公共団体等の取組を支える科学的・客観的な知見やデータ等の蓄積による調査研究の推進、ガイドライン等の作成、研修会の開催等を通じた技術的支援を行うことなどにより、施策の実施体制のより一層の強化を図る必要がある。
2 施策別の取組
 施策別の取組は次のとおりである。関係機関等は、これらの施策について、令和12年度までにその実施が図られるように努めるものとする。
 (1) 普及啓発・多様な主体との総合理解の醸成
   ① 現状と課題
  動物の愛護及び管理を推進するためには、広く国民が、終生飼養の責務、動物の虐待の防止及び動物の適正な取扱いに関して正しい知識及び理解を持つことが重要である。このため、国、地方公共団体等によって、動物の愛護及び管理の普及啓発事業が行われてきており、徐々に浸透しつつあるが、まだ十分ではなく、動物の愛護及び管理の意義等に関する国民を更に推進する必要がある。
 また、生命尊重、友愛等の情操の涵養の観点から、特に子どもが心豊かに育つ上で、動物との触れ合いや家庭動物等の適正な飼養の経験が重要であることが指摘されており、適正な方法による機会の確保が求められている。このような現状において、国及び地方公共団体、獣医師会、業界団体、動物愛護団体、動物の所有者等の団体、学術研究団体、調査研究機関等を始めとした関係者の連携協力の下に、様々な機会をとらえて教育活動や広報活動等に取り組むことが求められている。
   ② 講ずべき施策
ア 国及び地方公共団体は、関係団体等と連携しつつ、学校、地域、家庭等において、動物愛護週間行事や適正飼養講習会等の実施、各種普及啓発資料の作成、配布等により、動物の愛護及び管理に関する教育活動、広報活動等を実施すること。特に、所有者の責務のうち、終生飼養や適切な繁殖制限を講ずることについて積極的に広報すること。
  イ 社会規範としての動物の愛護及び管理に関する考え方や動物の取扱いに関する行為規範について、幅広い関係主体の参画による議論を活性化しつつ、中長期的に検討していくこと。
  ウ 動物を見せることや動物と触れ合うことを目的とした、動物の展示利用については、多種多様な利用形態ごとに意義と課題を整理するとともに、情操の涵養等、その効用を効果的にもたらすこと及び感染性の疾病の予防等、動物の健康及び安全を確保することの双方の観点から、展示利用における動物の取扱いに関する基本的な考え方を整理・検討すること。また、学校飼育動物の取扱いに関しても同様に基本的な考え方を整理・検討すること。
 (2) 適正飼養の推進による動物の健康及び安全の確保並びに変換・譲渡の促進
   ① 現状と課題
 適正飼養を推進するためには、飼主に対する教育が重要であり、国、地方公共団体等によってそのための様々な取組が行われてきているが、依然として安易な購入と飼養放棄、遺棄、虐待等の問題が一部において発生している。こうした問題を踏まえ、動物愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第39号。以下「令和元年改正法」という。)により、遺棄、虐待等に対する罰則の引き上げ等が行われた。
 また、都道府県、指定都市及び中核市における犬及び猫の引取り数は、平成16年度の年間約42万頭から平成30年度は年間約9万頭、殺処分率は平成16年度の約94%から平成30年度の約42%へと大幅に減少した。一方で、殺処分を減らすことを最優先した結果、譲渡適正のない個体の譲渡による咬傷事故の発生や、譲渡先の団体における過密飼育等、動物の健康及び安全の確保の観点からの問題が生じているとの指摘がある。今後は、令和元年改正法において地方公共団体が所有者不明の犬又は猫の引取を拒否できる場合が規定されたことや、早くから引取り数・殺処分率の削減等を進めてきた地方公共団体や野犬等が多く収容される地方公共団体もあることを踏まえ、動物の適正飼養を推進しつつ、殺処分を減らしていく必要がある。
   ② 講ずべき施策
ア 犬又は猫について、地方公共団体からの譲渡時、及び動物取扱業者からの販売時等において、遵守すべき飼養保管の基準等に基づき、原則として繁殖を制限しなければならないことについて説明が行われるようにすること。安易な飼養の抑制等により終生飼養を徹底すること。みだりな繁殖を防止するため不妊去勢措置を徹底すること。マイクロチップの装着等による所有者明示措置を推進すること、及び遺棄の防止を行うこと等により、地方公共団体における犬及び猫の引取数について、さらなる減少を図ること。
  イ 犬及び猫の殺処分を透明性を持って戦略的に減らしていくことが必要であり、以下の殺処分の3分類の特に②に属する個体の返還及び適正な譲渡促進を積極的に進め、令和12年度の殺処分数について、平成30年度50%減となるおおむね2万頭を目指すこと。また、①、③については飼い主責任の徹底や無責任な餌やりの防止により引取数を減少させ、結果的に該当する動物の数を減らしていくこと。
  譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)
  ①以外の処分(譲渡先の確保や適切な飼養管理が困難)
  引取り後の死亡
  ウ 野犬が多い地域等では、引取り数・殺処分率または殺処分数を減少させるため、集中的に捕獲を実施し、野犬の再生産を抑制することが必要な場合があり、短期的にこれらの数値が増加してもやむを得ない面があることなどを踏まえ、中長期的な視点に立ち、地域の実情に応じた殺処分と譲渡の考え方を整理するとともに、必要な普及啓発等の取組を推進すること。
  エ 犬又は猫の譲渡の促進に当たっては団体への譲渡が効果的であることを踏まえつつ、団体への適正な譲渡の推進に向けた現状や課題を整理し、対応について検討すること。
  オ 令和元年改正法において、都道府県等が設置する施設が動物愛護管理センターとしての機能を果たすようにすることや動物愛護管理センターが行う業務が明確化されたことを踏まえ、災害対策や多様な関係者の参画及び協働にも役立つ地域拠点としての役割も考慮して、引き続き、返還または譲渡の促進に向けた施設整備をすること。
  カ 令和元年改正法により、動物の殺傷、虐待等について罰則が強化されたこと及び虐待の通報が獣医師に義務づけられたことの周知徹底を図るとともに、通報への対応等の明確化及び必要な体制の構築について検討すること並びに警察との連携をより一層推進することにより、遺棄及び虐待の防止を図ること。
  キ 終生飼養の責務は、飼い主に最後まで責任を持って動物を飼養することを求めるものだが、やむを得ない理由により適切な飼養管理ができない場合には、動物の健康及び安全の保持の観点から行う譲渡や引取り等が否定されるものではなく、こうした終生飼養の趣旨の適正な理解が進むよう、普及啓発に努めること。
  ク 不適正飼養に起因して、周辺の生活環境が損なわれている事態や動物が衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態が生じていると認められる場合には、令和元年改正法により報告徴収又は立入検査が可能となったことを踏まえ、地方公共団体の指導、監督の強化等に向けた環境を整備すること。
 (3) 周辺の生活環境の保全と動物による危害の防止
   ① 現状と課題
 動物の不適切な飼養等又は給餌給水により、動物による危害及び周辺の生活環境が損なわれる事態等の迷惑問題が発生しており、地方公共団体等に寄せられる苦情等も依然として多い状況にある。所有者不明の犬又は猫について、新たに地方公共団体が引取りを拒否できる場合が規定されたが、動物による危害及び迷惑問題は、所有者等とその近隣住民等との間で感情的対立を誘発しやすいなどの性格を有していることもあるため、危害及び迷惑問題防止の観点から、行政主導による合意形成を踏まえたルール作りまたはルール作りに対するさらなる支援等、地域の実情に合わせた対策や対応が必要である。
 また、許可を受けて飼養されていた特定動物による人の殺傷事案が発生していること。令和元年改正法により、特定動物に関する規制が強化されたことを踏まえ、厳格な法令遵守が求められている。
   ② 講ずべき施策
ア 住宅密集地において地域住民の十分な理解の下に飼い主のいない猫への不妊去勢の徹底や給餌若しくは排せつ物の管理等を実施する地域猫活動の在り方に関し検討を加え、適切な情報発信を行うこと。
  イ 生活環境被害の防止や犬又は猫の適正飼養の観点から、所有者等のいない犬や猫に対する後先を考えない無責任な餌やり行為が望ましくないことについての普及啓発の強化や、地域猫活動に対する理解の促進等を通じ、所有者等のいない子犬及び子猫の発生を防止するための取組を推進すること。
  ウ 多頭飼育問題等不適当な飼養に対応するため、関係する地方公共団体の福祉部局等との連携を強化し、周辺の生活環境の保全等を図る措置の在り方について検討し、ガイドラインを作成すること。
  エ 特定動物の愛玩目的での飼養又は保管が禁止されるとともに、特定動物が交雑して生じた動物が規制対象に追加されたことについて、周知を推進し、遵守を徹底すること。
  オ 特定動物を販売する動物取扱業者に対し、販売先の飼養保管許可の有無について確認するだけではなく、飼養保管方法等に関する適切な説明を実施するよう指導すること。
  カ 特定動物に関連する法令遵守のため、指導マニュアルの策定を通じて、地方公共団体が専門知識を持った人材を育成できるよう支援すること。
 (4) 所有明示(個体識別)措置の推進
   ① 現状と課題
 動物の所有者が、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置を講ずること(所有明示)は、動物の盗難及び迷子の発生の防止に資するとともに、迷子になった動物や非常災害時に逸走した動物の所有者の発見を容易にし、所有者責任の所在の明確化による所有者の意識の向上等を通じて、動物の遺棄及び逸走の未然の防止に寄与するものである。令和元年改正法において、販売される犬又は猫へのマイクロチップの装着、所有者情報の登録等が義務化されたことから、所有明示措置の推進が一層求められており、所有明示措置の意義、役割等についての国民の理解を深めるとともに、各種識別器具の普及環境の整備等を推進する必要がある。
   ② 講ずべき施策
ア 販売される犬又は猫へのマイクロチップの装着、所有者情報の登録等が義務化された平成元年改正法の趣旨を踏まえ、遺棄の防止や返還の促進を図る効果的な制度運用に向け、必要な検討を行うこと。
  イ 義務化対象外の犬又は猫の所有者に対し、マイクロチップの装着を始めとする所有明示措置の必要性に関して啓発を推進しつつ、マイクロチップ装着等の義務対象範囲について検討すること。
 (5) 動物取扱業の適正化
   ① 現状と課題
 飼養管理が不適切な動物取扱業者が依然として見られるなど、動物取扱業者による不適正使用の実態があることから、令和元年改正法において動物取扱業者に対する規制が強化された。
 このような背景を踏まえて、動物取扱業の一層の適正化を図るため、新たな制度の着実な運用を図る必要がある。
   ② 講ずべき施策
ア 登録制度の遵守の徹底に加え、動物取扱責任者の要件の厳格化、動物に関する帳簿の備付けの義務化、遵守基準の具体化、勧告及び命令の権限強化等、新たな規制の着実な運用を図ること。
  イ 動物取扱業のさらなる適正化に必要な、地方公共団体による動物取扱業者に対する制度の周知や指導及び監視の強化並びに規制の実効性の確保が必要であり、これらに対する支援を検討すること。
  ウ 動物取扱業者や事業者団体が社会において果たすべき役割を自ら考え、優良な動物取扱業者の育成及び業界全体の資質の向上を図るよう、その主体的な取組を促進すること。
 (6) 実験動物の適正な取扱いの推進
   ① 現状と課題
 実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年4月環境省告示第88号。以下「実験動物の飼養保管等基準」という。)は、平成25年にその基準の内容を改正し、遵守状況の点検、その結果の公表及び可能な限りの外部機関による検証の実施について位置づけを行っている。平成29年には実験動物飼養保管等基準解説書研究会による「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説」を作成し、関係機関等に周知を行ってきた。動物を科学上の利用に供することは、生命科学の進展、医療技術等の開発等のために必要不可欠なものであるが、その飼養及び科学上の利用に当たっては、動物が命あるものであることに鑑み、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、国際的にも普及し、定着している実験動物の取扱いの基本的考え方である「3Rの原則」(代替法の活用:Replacement、使用数の削減:Reduction、苦痛の軽減:Refinement)を踏まえた適切な措置を講ずること等が必要とされている。
   ② 講ずべき施策
ア 関係省庁、団体等と連携しながら、実験動物を取り扱う関係機関及び関係者に対し、「3Rの原則」、実験動物の飼養保管等基準の周知の推進や遵守の徹底を進めるとともに、当該基準の遵守状況について、定期的な実態把握を行い、適切な方法により公表すること。>
  イ 令和元年改正法の附則において、実験動物を取り扱う者等による実験動物の飼養保管状況を勘案し、これらの者を動物取扱業者に追加することその他これらの者による適正な動物の飼養保管のための施策の在り方について検討を加えること。また代替法の活用、使用数の削減等による動物の適正な利用の在り方について検討を加えることが規定されたことから、関係省庁と連携し、現行の機関管理体制(自主管理体制)の仕組みについてレビューを行い、その結果を踏まえて、必要な検討を行うこと。
 (7) 産業動物の適正な取扱いの推進
   ① 現状と課題
 我が国も加盟する国際獣疫事務局 (OIE) において、アニマルウェルフェアに関する勧告が順次採択されていることを踏まえ、我が国においては、「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方にについて」の通知の発出や国の補助事業等による各畜種ごとの「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」の作成・改訂がなされ、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理の普及・定着が図られている。このため、これらの動向を踏まえ、産業動物の飼養等の在り方を検討し、産業動物の飼養及び保管に関する基準(昭和62年内閣府告示第22号。以下「産業動物の飼養保管基準」という)を見直す必要がある。
   ② 講ずべき施策
ア 令和元年改正法において、地方公共団体の畜産部局及び公衆衛生部局との連携強化が盛り込まれたことから、関係省庁と連携して、効果的な連携強化の在り方について検討を行うこと。
  イ 関係省庁の協力を得ながら、法及び産業動物の飼養保管基準の内容についての周知の推進や遵守の徹底について、効果的な方法を検討し、実施すること。
 (8) 災害対策
   ① 現状と課題
 災害時における飼い主責任によるペットとの同行避難の考え方がある程度普及し、「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年3月環境省発行。以下「ガイドライン」という。)を踏まえ、獣医師会や動物愛護団体等による動物救護活動も活発に行われるようになってきている一方で、円滑な避難や救護のためには、飼い主による平時からのしつけやワクチン接種等の適正な飼養管理が重要である。また、避難行動においては、ペットとの同行避難の徹底や避難所、応急仮設住宅での受入れ等が依然として社会的な課題となっている。近年は災害が広域化していることから、関係機関等との連携協力の下に広域的な協力体制を整備しておく必要がある。
   ② 講ずべき施策
ア 都道府県以外の地方公共団体においても、地域防災計画等における動物の取扱い等に関する位置付けが明確化されるよう促すとともに、地域の実情に応じて、ペットの一時預かりや、ペット連れ被災者に対する避難所、応急仮設住宅、復興住宅等での対応が適切に行われるよう、既存施設の活用や施設鴟尾を含め、必要な体制整備を推進すること。
  イ ガイドラインの記載内容を踏まえ、ペットを連れた防災訓練の実施等により、地域の特性に応じた平常時の準備、飼い主や動物取扱業者等への避難対策の周知等、必要な体制の整備を推進すること。
 (9) 人材育成
   ① 現状と課題
 動物の愛護及び管理に関する施策の対象は、広範かつ多岐にわたっており、施策の実施に当たっては相当の知識や技術が必要である。令和元年改正法において、都道府県、指定都市及び中核市は動物愛護管理員等の担当職員を置くこととされ、指定都市及び中核都市以外の市区町村も、動物愛護管理担当職員を置くよう努めることとされた。
 また、民間を含めた多様な組織や人材の参画・協働も必要である。都道府県知事並びに指定都市及び中核市の長により委託された動物愛護推進員等の人数は、平成30年度末で125地方公共団体中72地方公共団体、約3400人となっているものの、未だ委嘱のない地方公共団体もあるなど、民間の有識者等に対して協力を求めることができるような体制の整備は未だ十分とは言えない状況にある。
 このため、行政の担当職員や動物愛護推進員等の人材の育成等を更に積極的に推進していく必要がある。
   ② 講ずべき施策
ア 国は、動物愛護管理行政の担当者の専門的な知識や技術の習得に対する支援を行うこと。
  イ 関係地方公共団体等における協議会の設置及び動物愛護推進員等の委嘱を推進するとともに、動物虐待等の該当性についての客観的な判断や関係者への適切かつ効果的な監視・指導を行うために必要な研修等の実施を通じ、専門的な知識や技術の習得に対する支援を行うこと。
  ウ 国及び関係地方公共団体等における官民の連携事業の推進により、普及啓発教材の作成・配布や各種研修会・講演会の開催等を通じて、適正飼養に関する専門的な知識及び技能を保持する人材の育成を図ること。
 (10) 調査研究の推進
   ① 現状と課題
 動物の愛護及び管理に関する調査研究は、関係する分野が多岐にわたり、かつ応用的であるといった特徴を有していることから関係学会等は広範にわたっており、その知見等が体系的に整理されているとは言えない状況にある。多くの国民の共感を呼び、自主的な参加を幅広く促すことができる動物の愛護及び管理に関する施策を進めるためには、科学的な知見等に基づいた施策の展開も重要であることから、動物の愛護及び管理に関する国内外の事例・実態に関する調査研究を推進する必要がある。
   ② 講ずべき施策
ア 動物虐待等の該当性についての客観的な判断に資するよう、国内における虐待、遺棄等の具体的事例、罰則の適用状況、科学的知見等の集積を行うとともに、それらの分析・評価を進めること。
  イ アニマルウェルフェアの考え方と諸外国等における制度とその運用実態について、文化的・社会的背景等を含めて情報収集を行い、アニマルウェルフェアや動物愛護の考え方、課題、留意点について整理すること。
  ウ 脊椎動物の苦痛の感受性について、関係機関の協力を得ながら、諸外国等における調査研究、制度とその運用の事例等について情報の収集を行い、時代背景と社会認識の変化や具体的な技術の進歩等に応じて、その取扱いの在り方の整理を行うこと。
  エ 動物の殺処分の方法について、関係機関の協力を得ながら、諸外国等における科学的知見や制度等について情報収集を行い、従業者の安全性や心理的な負担等も考慮して基本的な考え方や具体的な手法について再整理すること。
  オ 関係機関が協力して、諸外国の制度、科学的知見に関する文献、国内における動物の飼養保管の実態、ペット飼育による社会的効用や新たな社会的需要等に係る情報収集を行うこと。

 

第3 動物愛護管理推進計画の策定に関する事項

1 計画策定の目的
 動物愛護管理推進計画(以下「計画」という。)は、動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)に即して、地域の実情を踏まえ、動物の愛護及び管理に関する行政の基本的方向性及び中長期的な目標を明確化するとともに、当該目標達成のための手段及び実施主体の設定等を行うことにより、計画的かつ統一的に施策を遂行すること等を目的として策定するものとする。
2 計画期間
 基本指針との体系的な統合性を確保するため、計画期間は、原則として令和3年4月1日から令和13年3月31日までの10年間とする。
3 対象地域
 対象地域は、当該都道府県の区域とする。
4 計画の記載項目
 計画の記載項目については、法第6条第2項及び第3項に、動物の愛護及び管理に関し実施すべき施策に関する基本的な方針、動物の適正な飼養及び保管を図るための施策に関する事項、災害時における動物の適正な飼養及び保管を図るための施策に関する事項、動物の愛護及び管理に関する施策を実施するために必要な体制の整備(国、関係地方公共団体、民間団体等との連携の確保を含む。)に関する事項及び動物の愛護及び管理に関する普及啓発に関する事項その他動物の愛護及び管理に関する施策を推進するために必要な事項と規定されているところであるが、これらを踏まえ、地域の事情に応じ、記載事項の追加、それらの構成の在り方等について、必要に応じて検討するものとする。
5策定及び実行
 (1) 多様な意見の集約及び合意形成の確保
 計画の策定に当たっては、多様な意見、情報及び専門的知識を把握するとともに、それらを必要に応じて計画に反映させるために、学識経験者、関係行政機関、獣医師会、業界団体、動物愛護団体、動物の所有者等の団体、地域住民、研究機関等からなる検討会を設置するなどして、計画の策定及び点検等を行うよう努めるものとする。また、計画の策定過程等の透明性の向上及び計画内容についての合意形成を図るために、必要に応じてパブリックコメント等を行うものとする。
 (2) 関係地方公共団体との協議
 動物愛護管理行政の推進には、都道府県が主要な役割を果たしているが、指定都市においては動物取扱業の登録及び特定動物の飼養許可に関する事務等、中核市においては犬又は猫の引取りの事務を実施している。また、動物の愛護及び普及啓発、地域住民に対する直接的な指導等では、全ての市区町村にその役割が期待される場合もある。このため、関係地方公共団体間での施策の整合を図り、計画の実効性を高める観点から、計画を策定しまたは変更しようとするときは、あらかじめ関係市区町村の意見を聴くものとする。なお、一つの都道府県の区域を越えて発生している問題等があり、広域的な視点からの対応が必要と考えられる場合は、必要に応じ、国は技術的助言を行うことなどにより、関係都道府県等との連絡調整等を円滑に行うことができるよう努めるものとする。
 (3) 計画の公表等
 計画が策定された後は、速やかに広報等により公表するとともに、環境大臣に連絡するものとする。
 (4) 実施計画の作成
 必要に応じて、動物の愛護及び管理に関する施策に係る年間実施計画等を策定し、多様な主体の参加を広く得ながら、計画の推進を図るよう努めるものとする。
 (5) 点検及び見直し
 動物の愛護及び管理に関する行政の着実な推進を図るため、毎年、計画の達成状況を点検し、施策に反映させるものとする。また、基本指針の改定等に合わせて、中間的な目標の設定等の必要な見直しを行うものとする。

 

第4 動物愛護管理基本指針の点検及び見直し

   動物の愛護及び管理に関する行政の着実な推進を図るため、毎年度、基本指針の達成状況を点検し、その結果を施策に反映させることとする。なお、点検結果については、その概要を公表するものとする。
 また、状況の変化に適時的確に対応するため、策定後おおむね5年目に当たる令和7年度を目途として、その見直しを行うこととする。

 

附則

   この告示は、令和2年6月1日から適用する。