Law of animal

動物六法

 神奈川県における獣医療を提供する体制の整備を図るための計画書

制  定 平成 24年 03月 神奈川県

 

獣医療を提供する体制の整備を図るための神奈川県計画

本県は全国第2位の900万人余の人口を抱えており、東京都に次ぐ一大消費地であるとともに、畜産物の生産地としても、都市近郊の地の利を生かした地産地消の一翼を担ってきました。また、人口に比例して犬猫等の飼育頭数も多く、その飼育動物診療施設(以下診療施設)数についても全国有数の地域であります。
 そのような中、本県の獣医療は牛や豚、鶏といった畜産業に係る産業動物や、犬猫等のコンパニオンアニマルと呼ばれる一般家庭における飼育動物(以下小動物)の診療や保健衛生の向上、食品衛生や環境衛生等の公衆衛生の向上において大きな役割を担ってきましたが、畜産物の安全性の確保や動物の健康及び公衆衛生の向上において、これまで以上に獣医師の責務は重くなっています。
 しかし、近年のそれらを取り巻く情勢は大きく変化しており、その対応には専門の枠にとらわれず、幅広く柔軟に対応する必要があります。
 産業動物においては、家畜衛生技術の向上等により家畜伝染病の発生は大きく減少してきました。
 一方で、海外との人や物の行き来が増え、国境のボーダレス化が進み、我が国においても家畜伝染病の侵入リスクは増加しており、口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザや牛海綿状脳症(BSE)といった家畜伝染病の発生等、既存の体制では対応が難しくなるケースも認められるようになりました。加えて、生産性向上の指導や畜産物安全管理体制(農場HACCP)の構築等、獣医師に対するニーズはますます高くなってきています。
 これらに対応するため、家畜伝染病予防法の改正や特定家畜伝染病防疫指針の策定等危機管理体制の強化を図り、防疫体制の確保を行っています。また、酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律に基づき、平成23年5月に策定された「神奈川県酪農・肉用牛近代化計画」等を踏まえ、適切な獣医療を提供することによって、生産コストの低減や生産性の向上を推進し、健全な畜産経営の発展を推進していきます。このため、これら諸問題に対応するための獣医師の確保に努め、緊急時に対応できる体制の整備、強化が必要になっています。
 また、犬猫等といった小動物については、診療獣医師数の充実が図られている一方、飼育者における獣医療のニーズは従来にも増して高度化・多様化しています。これらに対応するために、技術の研鑽を図り、適切で高度な獣医療の提供ができる体制の構築に努める必要があります。加えて人獣共通感染症の予防に努めるため、日頃からの飼育管理について保健衛生指導を行うことも求められています。
 このような状況から、安全な畜産物の安定的供給やより高度な小動物獣医療の提供、人獣共通感染症の予防のための保健衛生指導、より一層の食品衛生の向上等、県民からのニーズに応え、本県における獣医療が適切に提供されるように、本計画を定めるものとします。
 

第1 獣医療を提供する体制の整備が必要な地域

 産業動物診療施設の整備に関する目標を達成するため、計画的な取組みが必要と見込まれる地域として、県下を東部西部の二箇所に分けました。
 なお、東部地域は県央家畜保健衛生所、西部地域は湘南家畜保健衛生所の所管する地域としました。

地域地域内の市町村名
東部地域横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、鎌倉市、逗子市、三浦市、厚木市、大和市、海老名市、座間市、綾瀬市、葉山町、愛川町、清川村 (12市2町1村)
西部地域平塚市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、秦野市、伊勢原市、南足柄市、寒川町、大磯町、二宮町、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町、湯河原町 (7市11町)

 

第2 整備を行う診療施設の内容その他の診療施設の整備に関する目標

 1診療施設及び主要な診療機器等の整備の現状
  (1)診療施設
各地域における産業動物診療施設の開設状況は次のとおりです。
(単位:ヶ所)
地域診療施設数開設主体別内訳
県 市町村 農業協同組合 農協共済組合 大学 その他の団体 個人 備考
東部地域 35312011018
西部地域 2130211311
県  計 56614121329
(平成22年12月現在:家畜保健衛生所調べ)
  (2)主要な診療機器等
産業動物診療施設における主要な診療機器等の整備状況は次のとおりです。
   ア 診療施設の整備状況
(単位:ヶ所)
地域 開設区分 施設数 検査室 解剖室 手術室 焼却施設 エックス線診療室 入院施設備考
東部地域 県3331
市11
農協2
共済
大学111111
法人101012
個人18615
西部地域 県32
市
農協2
共済12
大学1411
法人32
個人112
(平成22年12月現在:家畜保健衛生所調べ)
   イ 主な診療機器の整備状況
(単位:台)
地域開設区分検体成分分析装置
血液生化学
 分析装置
血液電解質
 分析装置
高速液体
クロマトグラフ
分光光度計 自動血球
計算装置
血液ガス
測定装置
乳中体細胞
 測定装置
乳成分測定器
(ミルコスキャン)
東部地域 県1111
市
農協
共済
大学11111
法人11
個人322
西部地域 県121
市
農協11
共済121
大学32111
法人21
個人211

(単位:台)
地域開設区分生体画像診断装置
ファイバー
  スコープ
エックス線
 撮影装置
イメージ
インテンシファイア
超音波
 診断装置
CTスキャン MRI 心電心音計
東部地域 県1
市
農協
共済
大学1111
法人24311
個人86
西部地域 県1
市
農協
共済3
大学1111
法人2
個人12

(単位:台)
地域開設区分免疫・DNA診断装置等
酵素抗体
測定装置
ELISA用
プレートウォッシャー
蛍光顕微鏡 PCR
測定装置
DNA
シークエンター
孵卵器 嫌気性
 培養装置
クリーン
ベンチ
東部地域 県1221311
市12
農協
共済
大学
法人11111
個人2
西部地域 県1113
市
農協
共済1
大学2111111
法人2
個人

(単位:台)
地域開設区分理化学的治療機等ET関連機器
レーザー装置 ガス麻酔機 マイクロマニュピレーター プログラムフリーザー
東部地域 県11
市
農協
共済
大学1
法人21
個人4
西部地域 県11
市
農協
共済1
大学1
法人
個人
 2診療施設の整備に関する目標
  (1)産業動物診療施設別の整備目標
   ア家畜保健衛生所
 家畜保健衛生所については、地域の家畜衛生の中心的機関として、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザ等特定家畜伝染病の発生に備え、サーベイランスのための検査機器や発生時の迅速な診断のための機器の計画的な整備を推進します。
 また、これらの施設の整備した機器等については、積極的に診療獣医師との連係を図り、その利活用を進め技術的な支援に活用します。
   イ農業共済組合の診療施設
 農業共済食い合いについては、近年本県での産業動物診療の中心的役割を担っており、個人開業獣医師が不足している地域においても活動しているため、効率的な機器や施設の整備を推進します。また、家畜保健衛生所との連携をとりながら、可能な限り施設や機器の相互利用を図る等、その役割分担を行い生産者に対する適切な獣医療の提供に努めます。
   ウ個人及び法人開業の診療施設
 産業動物に係る個人経営等については、既存の家畜保健衛生所の施設を活用することとし、高度な診断機器等を整備する場合には、獣医療法第15条の規定による、診療施設整備計画に基づく長期低利の融資制度の活用等により、その整備の推進を図ります。
  (2)各地域における産業動物診療施設の整備目標
   ア東部地域
 東部地域は、乳用牛や肉用牛、豚、採卵鶏飼養農家が各地に点在してます。乳用牛の診察については農業共済組合が中心となり行われているものの、一部地域では個人等開業獣医師が深慮を行っています。また、豚、採卵鶏については個人等開業獣医師が診療を行っていること等から、家畜保健衛生所や農業共済組合の施設等の積極的な活用を図りながら、この地域全体としての診療施設における機器等の整備を推進します。
   イ西部地域
 西部地域は、乳用牛が多数飼育され、診療については肉用牛を含めて農業共済組合と個人等診療獣医師が中心に行われています。この地域では乳房炎や繁殖障害を中心とした治療が多く、家畜保健衛生所の施設や機器が積極的に活用されています。また、豚、採卵鶏については東部地域に比べ飼養頭羽数は少ないものの、個人等開業獣医師が診療しています。今後は、家畜保健衛生所等基幹的な施設での機器等の整備を計画的に推進します。
  (3)小動物診療施設の整備目標
 小動物診療施設については、近年、ペットのコンパニオンアニマル化や高齢化等のため、より高度で多様な獣医療の提供が求められています。このことからも、診療施設や機器等の地域での共同利用や、検査等の外部委託等を進めながら、適切な施設等を整備することが望まれます。

 

第3 獣医師の確保に関する目標

 1獣医師の確保目標
 平成32年度を目標年度とする産業動物診療獣医師及び神奈川県に勤務する獣医師の確保目標は次のとおりです。
 なお、平成22年12月現在の獣医師数は、産業動物の診療に実際に従事している獣医師数(県職員や大学、研究機関等の獣医師を除く)とし、平成32年度の確保目標は「神奈川県酪農・肉用牛近代化計画」からの予想家畜飼養頭羽数をもとに算出しました。
 また、公務員獣医師については、神奈川県に勤務する獣医師について農林水産部局、衛生部局ともに、適正な獣医療を提供し、食の安全を確保できる体制を整備するため、計画的な確保に努めることとします。
産業動物診療獣医師平成22年12月現在平成32年度確保目標今後確保すべき人数
東部地域47398
西部地域27172
公務員獣医師平成23年4月現在平成32年度までの退職予定者数
神奈川県に勤務22174
うち農林水産関係7522
 2獣医師の確保対策
 従来から診療している産業動物診療獣医師は、高齢化による廃業が多く、都市化が進む中での家畜飼養頭数の減少から、新規に参入する獣医師も少なく、全体として減少しています。これらのことから、診療施設のない地域においては、広域化に対応できる診療施設が担っているのが現状です。
 今後も高齢化等により、診療獣医師の減少が見込まれることから、広域化に対応できる診療施設を中心に獣医師の確保に努め、自衛防疫業務においては各農場における管理獣医師等の協力を得ながら進めていくこととします。
 新規就業については、家畜保健衛生所等は県内獣医系大学を中心とした、学生実習の受入や講義、就職説明会への職員の派遣等を通じて、産業動物分野のやりがいや魅力を伝えることによって産業動物診療への就業を誘導し、加えて県内への就職を促します。また、地域の診療獣医師と獣医系大学との連携を深め、学生に多くの実学の機会を提供することとします。
 また、近年産業動物獣医師についても、女性の割合が高くなっていることから、出産休暇や育児休業等、子育てのしやすい職場環境の確保に努めるため、退職獣医師等を活用した人材バンク制度の確立等を検討する必要があります。

 

第4 相互の機能及び業務の連携を行う施設の内容及びその方針

産業動物に係る効率的な診療体制の整備を図るため、獣医療関連施設については、家畜保健衛生所や農業共済組合、獣医系大学等が連携し、業務の効率化を図るものとします。

 1組織的な家畜防疫体制の確立
 家畜保健衛生所を中心として、農業共済組合や開業獣医師、獣医系大学との連携を図り、迅速な情報提供を行う等、緊急時の連絡体制の構築や通常の検査体制の充実を図り、地域のサーベイランス体制の強化を推進します。
 また、自衛防疫組織を活用しながら家畜伝染病の発生予防に努め、疑い事例発生時の通報体制の確保に努めます。加えて口蹄疫や高病原性鶏インフルエンザ等広域的な伝染病発生時には、小動物獣医師を含めた人的協力や、資機材の提供等防疫対応を早急に行える様、日頃からの協力体制の整備や連携強化を図ることとします。
 2診療施設・診療機器の効率的利用
 診療の迅速化・的確化を推進するため、施設等を有しない診療獣医師に対して家畜保健衛生所や農業共済組合の利用を図ることに加え、診療獣医師から県内獣医系大学への二次診療体制の構築を図りながら、獣医系大学の高度な診療施設等の利活用を図り、産業動物に対するす高度医療の提供や診断技術の向上に努めるものとします。
 また、家畜保健衛生所と獣医系大学の診療施設等の相互利活用については、「都市農業と振興における加奈皮県と大学との連携に関する協定書」に基づく、連携協力を推進します。
 3獣医療情報の提供システムの整備
 県内診療施設が機能的に利用されるために、家畜保健衛生所が中心となり現在行われている食肉衛生検査所との情報の共有化を更に進め、より生産者及び診療獣医師が必要としている、と畜検査成績の農場へのフィードバックを行い、家畜保健衛生所と管理獣医師等が予防獣医療を提供することにより、ハードヘルスの向上に努めます。
 また、農業共済組合の診療施設に対しては家畜保健衛生所との連絡強化による情報共有に努め、獣医系大学を加えた総合的な診療体制を確立することによって、最新の獣医療を提供できる体制を整備します。
 4衛生検査機関との業務の連携
 県内では養豚を中心に、企業的経営の中で集団的衛生管理が進み、日常の衛生検査体制が確立されています。そのような中で、より高度な診断技術が求められ、血液検査等においてもこれらに対応できる民間検査機関を活用できるように、日頃からの連係強化を図ります。
 5診療効率の悪い地域に対する診療の提供
 都市化の進む中で廃業する農家が増え、住宅街の中に点在する農家がみられるようになりました。そのような中で歌医療が提供されにくい地域も現実にはあり、広域化された農業共済組合や一部の個人間業獣医師等に頼らざるを得ない状況です。これら地域に対しては、県内での関係機関における連携の中で意見調整を図りながら、十分な獣医療を提供できるように努めます。

 

第5 診療上必要な技術の研修の実施及び獣医療に間する技術の向上に関する事項

 1臨床研修
  (1)産業動物分野
 臨床現場における獣医療技術や各種関係法令、食の安全に関する知識の習得等幅広い分野に精通する歌医師を育成するために、県や歌医師会等は研修会等の開催に努め、広くその参加を募り最新の情報を共有することとします。
  (2)公務員分野
 国や団体等が主催する講習会や研修会に参加し、最新の歌医療技術の習得に努め、その情報については地域の歌医師への伝達を行うことにより、周知を図ることとします。
  (3)小動物分野
 近年、小動物獣医療に対しては、最新技術力提供に加えて、飼育者へ対するインフオームド・コンセントに代表される飼育者への十分な説明とコミュニケーション能力の向上が必須であり、法令遵守と動物の福祉の更なる向上を図るため、歌医師会等は最新技術の情報提供、地域獣医師のレベルアップを図るため、専門分野における研修会を積極的に間催し、参加への促進を図ることとします。
 2高度研修
  (1)産業動物分野
 獣医師会等は、集団管理衛生技術や高度専門技術の習得のための講習会や研修会の開催に努め、必要に応じて獣医系大学との連携を回りながら最新獣医療の習得を図ることとします。
  (2)公務員分野
 国等が主催する家畜衛生や公衆衛生、畜産技術等の講習会への参加を積極的に行い、県内関係者への伝達講習を実施することにより、地域全体の技術の向上に努めます。
  (3)小動物分野
 獣医師会等は、より専門性の高い技術の向上に努めるため、専門分野別の講習会や研修会を開催する等獣医療技術の向上に努めます。また、獣医系大学との連係を図りながら、最新の獣医療を広く普及させることに努めます。
 3生涯研修
 獣医師会等は、診療に従事する獣医師が、獣医療技術や口蹄疫、高病原性鶏インフルエンザといった広域対応が必要とされる、家畜伝染病等に関する最新の知識や診断技術を習得するため、研修会、講習会はもとより、パンフレット等の教材等の提供に努めるものとします。
 また、休職中の獣医師に対しても、復職時には最新の獣医療が提供できる様に、研修会等の参加を促すことに努めるものとします。

 

第6 その他獣医療を提供する体制の整備に関し必要な事項

 1 行政分野において連切に獣医療が提供できる体制の整備  行政分野においては、家畜衛生や公衆衛生、野生動物、動物愛護等多岐に渡る獣医療の提供が求められているため、それぞれ相談窓口のより一層の明確化を図ります。  また、各分野での獣医療の状況についても情報収集に努め、それぞれの情報の共有化を進めながら、獣医師会等団体と連携した監視指導体制の整備に努めます。
 2飼育者の衛生知識の啓発・普及等
  (1)産業動物分野及び公務員分野
 県、畜産関係団体等は家畜飼養者へ、自衛防疫活動の徹底や食の安全への取り組みのため、研修会等を行い啓発活動を行うことによって意識の向上に努め、高品質な畜産物の生産のための衛生管理体制の整備を進めます。また、県、畜産関係団体等は協力しながら、自衛防疫集団が行う消毒やワクチン接種等の活動を推進し、伝染病発生予防やまん延防止、畜産物の安全性確保を図ることとします。
  (2)小動物分野
 獣医師会等は、小動物の適切な健康管理を図るため、飼育者に対する衛生意識の普及・啓発及び健康相談活動の促進を図るほか、獣医師による飼育者へ対するインフオームド・コンセントとコミュニケーションの徹底を図ることを推進し、夜間休日診療体制については、未整備地域について、その体制の整備に努めることとします。
 また、小動物診療施設と獣医系大学や高度な医療診療施設との情報共有化や二次診療体制の整備等を更に進め、より高度で多様化した獣医療のニーズに対応できる高度獣医療の提供を推進することとします。
 加えて、学校飼育動物や野生動物の保護・救済等についても、引き続き獣医師会等が中心となり、相談窓口の設置や定期的な巡回等、保健衛生指導等を行っていくこととします。
 3広報活動の充実
 畜産関係団体等のHPや広報誌を活用し、家畜衛生情報や獣医療に関する情報の提供に努め、家畜伝染病発生時の緊急連絡体制の周知や、夜間休日に診療を提供できる診療施設、専門性の高い診療施設の情報等、県民に対する獣医療の提供について広報活動の促進を図ります。
 4診療施設の整備
 県計画に基づいて産業動物診療施設の整備を推進する場合には、獣医療法第15条の規定に基づき、株式会社日本政策金融公庫が実施する農林漁業施設資金の融資について活用を図ることとします。